キミは許婚
「社長……いえ、副社長……」
副社長、と聖を呼び直しながら、すっかり暗くなった庭園に現れたのは秘書の柚野さんだった。
その言葉に聖は目を丸くし、やがて全てを理解したように頷いた。
副社長って……何!?
どういうこと!?
ちょっと……! あたしは頷くことなんて出来ないよ!?
「そろそろ社に戻りませんと、また社長からのお怒りを買いますよ?」
「……そうだな……また面倒なことになる。じゃぁ明、また電話するから」
「ま、待って聖! なんで? なんで副社長なんて呼ばれてるの!?」
それに社長のお怒りって……まるで社長が別にいるみたい。
あたしは、車へ戻ろうとする聖の腕をしっかりと掴んで引き止めた。