キミは許婚
聖の辛そうな笑顔見てたら……また涙が出そうになるよ……。
そんなあたしを見抜いたのか、聖が挟んでいた両頬を軽く引っ張った。
「痛っ!」
「泣くな。今は爽がいるからそんな顔見せるな」
横目で柚野さんを見ると冷やかな視線で、冷笑を返してくれた。
「明は俺と許婚という縛りがなくても結婚するんだよ」
「決まってるの!? ……でも……なんでそんなに……?」
「理由は……説明する時間、今はないな」
聖はあたしの頬から手を離すと腕時計に目を移した。
ちゃんとした理由があるの?
だってまだ出会って間もないのに……初めて出会ったのは……許婚として紹介された時だよね?
……もしかして……もっと前に出会ってる……?