キミは許婚


そんなことを思い浮かべていると、隣にいた柚野さんが急いでいる聖を見て口を開いた。



「社に戻るなら……副社長専用の車が今、迎えに来ています。そちらでどうぞ」


「そうか……爽は社長専属の秘書だもんな」


「えぇ、もうあなたのスケジュールを管理することもありません」



二人が目を見合わせて寂しげに笑みを浮かべた。



「最後の仕事として週刊誌のこと、明様には私から説明致します。ご心配なく」


「あぁ、ただ結婚の理由は俺から話すからな!」


「……私がそんな無粋なマネをするとお思いですか?」



柚野さんの言葉に、聖は呆れたような苦笑いを浮かべると立ち去ろうとした。



でも……背中がちょっと小さく見える。


柚野さんも目線を伏せて辛い思いを断ち切るような顔……。


聖も柚野さんも……また一緒に仕事をするっていうことを諦めてるの?


寂しそうな顔をして?

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