キミは許婚
「ちゃんと……約束守ってみせて! 社長っていう肩書、奪い返してきなさいよ!」
聖は戸惑いと驚きが混じった顔をしていた。
柚野さんはこの展開をわかっていたのか、隣でクスクスと口に手を当てて上品に笑っている。
「……そうじゃないと、あたし結婚しないからね!?」
ちょっと大きな声で喋ったというだけなのに、息切れがする。
心臓がドクドク言ってる。
だってあたし、今すごいこと言ってるよね!?
あの上から目線の聖の、さらに上から物言ってるんだもん!!
「明……お前そんなこと言って……わかってるのか?」
「な、何を?」
戸惑っていた聖の目がどんどん黒みを帯びていく。
意志を取り戻した、深く底の見えない強い瞳があたしをじっと見据える。