キミは許婚


「俺と結婚したらそんな口、叩けなくなるんだぞ?」



なるんだぞ?って……


け、決定事項!?



思わず怯むあたしに聖はニヤリと口元を上げて、ペロリと瑞々しい舌で赤い唇を舐めた。


心臓を直に撫でられた感じがして、じわりとする刺激と悪寒に似たものが背筋をゾクリと走る。


聖の行動が頭のどこかではわかっていても、そうだと確信が持てなくて近くにいた柚野さんに聞いてみた。



「聖のあの行動の意味って……!」


「唇で唇を制す、ということでしょう。……何を今更、顔を赤くするのですか?」



柚野さんはにっこりと氷点下30度の笑み。
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