キミは許婚


「そうですね。明さまは私なんかが送迎致しましたね」



真っ直ぐ前を向いていた顔をあたしに向き直し、にっこりと微笑んでくれる。


あたしの体温がどんどん低くなっていくのがわかる。


今、絶対あたしの顔、青白いよ。



「な、なんか……は言ってないですよ! ゆ、柚野さんで良かった~!」



無理矢理作った笑顔で、小さくガッツポーズをして見せたが、柚野さんは一切見てくれず、エレベータに乗り込んだ。



「佐原社長の病室は何階ですか?」



さっきと変わらない笑顔だけど、醸し出す空気が温かいことに気付いてホッとした……

と、同時に自分がからかわれていることにも気付いた。
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