キミは許婚
自分が顔を歪めていることに気付いたのか、柚野さんはパッと顔をいつもの平然とした顔に変え、あたしに微笑んだ。
「で、そんな暗雲立ちこめる時に、明さまの電話があったんですよ」
「え……それって……すごく空気読めてない電話……」
自分でかけておいて何だが、もう穴があったら入りたいくらいタイミング悪い。
そりゃ自分も気が動転してたんだけど……やっぱり総会中にかけるべきじゃなかった。
「そして聖はここへ来た」
「すみません……聖ならそんな状況をくつがえすこともできたでしょうに……」
あたしの電話がなければ、社長に君臨し続けることだってできたかもしれない。
追い込んだのは合併先の社長だけど、やっぱりあたしだって責任感じるよ。