キミは許婚
自分の失態に落ち込み、うなだれていると、柚野さんらしくない優しい言葉をくれた。
「でも私はこれで良かったと思っています」
「え……?」
「一度社長という肩書から離れて、視野を広げてみるのもいいと思います」
温かい顔でゆっくりと話す柚野さんの言葉は嘘ではない様子。
でもいいのかな……それじゃぁ、柚野さんはそんな嫌な社長の元で働くんだよ?
「そして、さらに大きくなった聖が近いうちに明さまと私を迎えに来ますよ」
「迎えにって……それ……」
「えぇ、社長に戻ってきてくれる、私もそう信じることにしました」
柚野さんは、春の縁側に差し込む柔らかい日差しのように微笑んでくれている。
いつものマイナス温度じゃない……。