キミは許婚


あたしが不満を顔で表していると、何故か父も不満そうな顔をして聞いてきた。



「明は今までどこ行ってたんだ」


「あ……ちょっと外の空気を吸いに……」



病室でいなかったから拗ねてるのかな。



「そうか、ならいいんだが……ちょっとばかし時間がかかってたみたいだからな」


「……お父さん、目覚めてすぐじゃないでしょ!? ……ていうかナースコール!」



看護師に父の目覚めを知らせようとボタンを手にした時、父の手が止めた。



「まさか上条聖と会っていたのか?」


「……そんなことより!」


「答えなさい、明!」



このままナースコールを押すか押さないかなんてやっていたら、父がまた倒れてしまいそう。


あたしは手を離した。

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