キミは許婚
「どうしたの~……? 明~……大きな声だして……」
寝ていた母が起きてしまった。
目をこすりながら顔を上げると目の前には、意識が戻ってないとばかり思っていた父の姿。
「え!? お、おと、お父さん~~っ!?」
あたしの大きな声よりもさらに大きな声で驚いた母は、座っていた椅子から落ちて尻餅まで着いてしまった。
「お父さん! いつ起きられたんですか!」
「……さっきだ」
「起こしてくれたっていいじゃないですか~……!」
体勢を整え直した母が涙をポロポロ零しながら父の腕にしがみつく。
時折、その太い父の腕を軽く小突きながら、でも嬉しそうに泣いていた。