キミは許婚
手に汗を握りしめ、ドキドキしながらテレビの画面に食いつく。
聖と出会ってから一度だけ、聖が出ている生放送の番組を見たことがあった。
哲太の家で見た番組だ。
その時よりも数倍、数十倍もドキドキする。
「明、座りなさい」
「あ……うん」
リビングの入り口で立ったあたしを、父が椅子へと促してくれるから、それに従いながらも、目線はテレビに合わせたまま座った。
テレビの中で聖が一礼をすると口を開いた。
『この度、上条不動産はこちらの平成不動産と合併することとなりました』
カメラのフラッシュが浴びせるようにたかれる。