キミは許婚
「……な、ならないよ」
あたしは無理矢理抵抗するかのように、絞り出した声で小さく呟いた。
「なる。明は俺のこと、まだ全部知らないからな」
「全部知らない方が好きでいられるかもよ?」
「なんだ……明は俺の全部を知りたくないのか?」
聖が妖艶な態度であたしを見透かすように聞いてくる。
さっきから全部、全部って言ってるけど……何なのよ、全部って。
言葉の意味は頭じゃ理解できない。
でも、本能はわかってるのかも。
さっき火照った身体が……また更に上気していく。
目を合わすんじゃなかった。
聖の奥深い瞳に吸い込まれたまま、あたしは聖から目を逸らすことができなくなっていた。