キミは許婚


肩透かしを食わされた気分で平静を取り戻しながら、父と母に目線を合わせると、二人とも優しく微笑んでくれた。



「あら、じゃぁ食べ物は冷蔵庫に入れて保管しておきますから、

明日にでも来て下さいなぁ。今日はゆっくり、二人きりで……ね?」


「うむ、明も今日は誕生日だからな。それもハタチ、もう大人だ……仕方あるまい」



なんだか二人とも意味深なものを含みながら、あたしと聖を見送ってくれようとしている。



「ありがとうございます」



二人の言葉に感謝を告げて聖はまた深く頭を下げた。



そしてあたしの側までくると、


「明、行くぞ」


と促し、鋭い視線をあたしの目に絡めてきた。

< 440 / 533 >

この作品をシェア

pagetop