キミは許婚
抵抗を許さない瞳に従いながら、大広間を出て玄関まで向かう。
聖はスーツの胸ポケットを探り、携帯電話を取り出すと誰かに電話をかけ始めた。
「あぁ、俺だ。どうせ近くにいるんだろ? 迎えに来い」
それだけ言うと聖は電話を切って、また胸ポケットにしまった。
聖に「誰にかけたの?」なんて聞かなくても相手がわかってしまう。
聖が電話をかけて、きっとワンコールも鳴り終わらないくらいに相手は電話に出た。
そして社長になった聖の「迎えに来い」という言葉に反応する相手。
……あの秘書しかいないでしょ?