キミは許婚


聖は伸ばした手で、優しくあたしの頭を撫でた。



「明が顔を赤くした時どうしてやろうかと思ったよ。

もっと俺の手で赤く赤く……染めてやりたいって……」



聖の長い指が髪の間を滑って行く。


毛先まで到達した手が今度は顎に添えられ、ゆっくりと顔が近づいてくる……。



柔らかい唇が触れたのは額……次に目尻へ……軽くついばみながらキスをされる。



聖は唇を離すとさっきキスを落とした額に、自分の額をくっつけた。



「話を口実に明を連れ出すつもりだったけど……佐原社長にも夫人にも見抜かれてたな」


「そうだね……意味ありげに見送られたし、珍しく要領悪かったんじゃないの?」



クスクス笑うお互いの息が直接唇にかかってくすぐったい。

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