キミは許婚


「俺は明のこととなると自分が保てなくなるらしい」


「そんなこと言うなんて……ホント、珍しい」


「明にだけ……俺を乱す権利、与えてやるよ……」



切なげに低く呟くと、その口をゆっくりあたしの唇へ近付けた。



「ん……っ……」



唇が触れあった瞬間……意識が全てそこへ集中する。



聖が顔を動かすと変わる角度。


酸素を求めて微かに開けた口に、聖は綻びを見つけたと言わんばかりに舌を侵入させてくる。



「も……聖……っ」


「明……」



顎に添えられていた手はあたしの頭を抱えるように、もう片方の手は腰に添えてあたしを支えてくれていた。



そんな聖に甘えるように、あたしは聖の背中に腕を回し、スーツをギュッと掴んだ。


もう、スーツがしわになるとか……そんなことも考えられない……。
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