キミは許婚
このまま……夜に溶けてしまいたい……。
普段なら思いつかない、詩のような一節が頭に浮かぶ。
ポーッとして思考が止まる。
フワフワして……足元がおぼつかない……。
夢の中へいざなってくれる聖に置いていかれないよう、必死にしがみついていると耳にある音が聞こえてきた。
車のクラクションが短く二音。
ふいに現実へ戻されたあたしは聖から勢いよく離れた。
聖は焦った様子もなく、舌打ちをして車のライトに目を向ける。