キミは許婚
「明さまもどうぞ」
にっこりと微笑をあたしに向けてくれる。
「ど……どうも」
おずおずと車に歩み寄るあたしに、柚野さんは顔を近づけてきて耳元で囁いた。
「聖のことをちゃんと信じていらっしゃいましたか?」
小さな声が背筋を這う。
まるであたしの不安がっていた気持ちを見抜いたかのように。
「し……信じてました!」
「それは失礼」
強く言い返すあたしに、柚野さんは口に手を当てて控え目に笑った。
あたしが乗り込むと車は静かに走り出す。