キミは許婚
仕切が無くなったことに気付いた柚野さんは、バックミラー越しに聖に目を合わせた。
「何か御用でしょうか? 上条社長」
運転と同じ、何も動揺することなく静かに柚野さんは話す。
「俺が明と連絡を取っていない間……何かあったのか?」
「何か……とは?」
「そうだな……」
聖は一呼吸置きながらあたしに視線を送る。
あたしは焦りを隠すようにとオレンジジュースを呑みこんだ。
「明をいじめた……とか?」
聖の目が……今まで見たことのない鋭さで柚野さんを睨みつける。