キミは許婚


柚野さんの言葉にピタリと聖が止まる。


……まずい。


静かにあたしを見てくる聖が恐い。



「明……俺を信じてなかったのか?」


「し、信じてたよ! ちょっと柚野さん! 変なこと言わないでください!」



咄嗟にあたしは柚野さんに話を返したけど……


「私は事実を申しただけですよ」


運転しながらも意地悪くも楽しそうに笑う柚野さんが恨めしい。



「爽……お前、今も明をいじめて楽しんでるな?」



聖の質問に、目的地に到着したのか車を止めた柚野さんがこちらを振り向いた。


そして頬を緩めながら、にこやかに口を開いた。



「いえ、今は明さまをいじめるのと同時に、上条社長の反応も楽しんでいるんですよ」



……柚野さんに敵う人はいない。
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