キミは許婚
「最初から明と結婚するつもりだったからな、既成事実を作れば結婚も近くなると思った。
……だけど今は、あの時抱けなくて良かった、と思ってる」
「聖……」
聖の真面目な口ぶりに驚きながらも、逸らした視線を再度合わせる。
目を合わすんじゃなかった……
真っ黒に輝いている瞳へ……吸い込まれそう。
「出会った頃よりもっと明を好きになった……大事に、大切にしたいと思えるようになったんだ。
だから、明の心の準備ができるまで待ってやる」
言い終えた聖が手を伸ばして、そっとあたしの頭に触れた。
優しく小動物を撫でるかのように上下する手の平。
……この手の平からも充分、大切に思ってくれている気持ちが伝わってくるよ。