キミは許婚


「俺の全部を知りたいと言ってくれた時は嬉しかった。けど、無理はするな。ゆっくりでいい」



まるで子供をあやすような落ち着く声色。


聖、子供苦手そうなのに……意外……こんなにも優しい声、出るんだ。



声と手と……目の前の笑顔。



聖があたしを温かく包んでくれているみたい……。




このまま聖にギュッと包みこまれて、聖の全てで愛を感じることができたら……

どれだけ幸せを感じることができるだろう。



頭のてっぺんから撫で降りてきた聖の手が耳に触れ、またてっぺんに戻ろうとする。


その瞬間を見計らったように、あたしは顔を動かして手の平に頬を当てた。
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