キミは許婚


お風呂場へ向かうあたしの足取りは軽かった。


もしかして、と思ったことが杞憂に終わり気分が良かったんだ。




「あら~あなた、3年前のこともう忘れたのぉ?」


「3年前? なんのことかな……?」


「聖さん、一回挨拶に来られたでしょ~? でも、私とあなたは不在で……明しかいなかった時だけど」


「……そうだったかな?」


「まぁ。お酒飲んでなくても忘れっぽいのねぇ。明もあなたと一緒で忘れっぽいんだから……」




だから、あたしの去っていく姿を見ながら、父と母がこんな会話が交わしていたなんて、全く気がつかなかったんだ。
< 97 / 533 >

この作品をシェア

pagetop