キミは許婚
お風呂場へ向かうあたしの足取りは軽かった。
もしかして、と思ったことが杞憂に終わり気分が良かったんだ。
「あら~あなた、3年前のこともう忘れたのぉ?」
「3年前? なんのことかな……?」
「聖さん、一回挨拶に来られたでしょ~? でも、私とあなたは不在で……明しかいなかった時だけど」
「……そうだったかな?」
「まぁ。お酒飲んでなくても忘れっぽいのねぇ。明もあなたと一緒で忘れっぽいんだから……」
だから、あたしの去っていく姿を見ながら、父と母がこんな会話が交わしていたなんて、全く気がつかなかったんだ。