―ユージェニクス―
ネズミも逃げ出す凄まじい張手音が診療所にこだました。


茉梨亜は息を荒げ、管原は腫れた左頬を押さえて床に吹っ飛んでいる。


「ちょっ…何するの茉梨亜ちゃん!」

「はぁ!!?それはこっちの台詞よ!!!なんって事するのこのヘンタイッ!ドスケベ!!ロリコン!!!」

茉梨亜の言葉の暴力に管原は成す術も無い。

だが微かに喉で笑っていた。

「M!?」
「ちょい待ち!俺はノーマルだ…ホント…」

辛うじて復活する管原。

「いやぁでもおまえがこんな反応するとはなー…まじなんだなぁ、ククク」

まだ笑っている。

「もーやだ来ないでっ変質者!!」
「とことん言いまくりだな…たかがキスの一つや二つ減るもんじゃねーだろ」
「この場合は確実に減った気がする!まさかお風呂に一週間入ってない変態ロリマゾ医者なんかに…」
茉梨亜はおぞけを背負いながらベッドからずりずりと這い下りる。

「まてまて茉梨亜くん、勘違いをしているようだが俺はマゾとかロリコンとかましてホモとかアブノーマルタイプは一切持ってないから!やってみる?起たないから!」
「何が?!!それにホモまで言ってないし!わざわざ否定するなんてますます怪し……」
「とにかく、今のはおまえの純粋な反応を見たかっただけなのだ、わはははは」

「もー意味分かんないし……」

盛大な態度の管原に、逆に呆れ返って溜め息をつく茉梨亜。

「じゃああたしもう帰るから!いつまでもこんなとこにいたら何されるか分かんないし…」

「わーかったからもう何もしない!それよりちょっとだけ、帰る前に質問させてくれ」

管原は軽く両手を上げた態度を見せ、茉梨亜を呼び止める。

「何?」

「おまえ今何処に住んでんの?」


「……」

「……」

「……あなたって」

「あっおまえ今家に来るつもりじゃとか思っただろ!断じて違うぞ!ただ俺は情報を……」

「もしもし研究所ですかロリコンMホモ変態ストーカーが今診療所に」

「もう何も聞きませんから受話器放してください」


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