―ユージェニクス―
「ぅ、うん…あずさはどうして黒川邸に来たの?ここに来たら…その…」

「あはっあーんな事やこーんな事のハナシ?!」

なんとでもない風にあずさは笑顔を向ける。

「へーきだよぅ!それであたしの欲しいものいーっぱい貰えるなら☆」

「そ…そんな」

やっぱり、あずさみたいな考えは自分には浮かばない。
どうしたって、今有るのは黒川邸での“これから”という恐怖だけ。

「あずさ…私は無理だよ…」

「えー!なんで?!」

なんでって……

「それにしてもなんかぁ、肌寒いねここ!エアコン温度上げてくれなぃかな〜」

あずさは天井をの方を見上げながらぶーたれた。

そして廊下にも設置されている監視カメラに気がつく。

「あ!カメラだぁ〜〜おーい☆」

何が嬉しいのかあずさはカメラに向かって両手を振りだした。

「あ…あずさ」

なんか気恥ずかしくなって美織はあずさの行動を止めかける。

その時…


「…あれ?」

美織は監視カメラの小さな赤ランプが今、消えたような気がした。

赤ランプはカメラ起動中のサイン…

そういう事は美織にもなんとなく分かる。


(なんで今切れたんだろ…)

「……」



「いたぞ、君達だな?部屋を抜け出したというのは」

「「!」」

背後から低い声。
振り向くと黒スーツの男二人……先程警備員から指示が入った彼らは、なんなくあずさと美織を見つけだした。

「えっ抜け出したっていぅかぁ、探検してたんですぅ」

あずさは何の悪びれもなく言ってのけるが、美織は黒の精鋭に畏縮してしまう。

「とにかく、早く部屋に戻るんだ」

「……」


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