―ユージェニクス―
何かが挟まって…
そうだっただろうか。
確かに扉は閉まった気がするのだが……
「あれっ美織ちゃん、このペンダント可愛いぃ〜」
あずさは、美織の首元に掛けられた小さなペンダントを見つける。
凝った星の形でキラキラしていた。
「あ、うん…綺麗でしょ。貰ったの」
「へぇ〜〜カレシぃ?」
「ちっ違うわ……」
少し和やかに話した後、あずさが不意に時計を見る。
「あー…美織ちゃん、ちょっとだけ待ってて、すぐ戻るから」
「え、あずさ……」
「すぐ戻るからぁ!」
すくっと立ったあずさは扉の方に駆けていく。
途中未だ倒れている黒服の様子を見たが、特に何もなかった様だ。
「あずさ……変わった子だな……」
妙にテキパキした動きとか、あの頼りになる様な感じ。
ただ可愛いだけじゃないような……
彼女は一体どういった子なんだろうか。
美織の部屋の扉を開け、廊下に顔を出す。
周囲に人は……
「おい」
「!」
一人居た。
部屋横の壁際に……
他には誰も居ない。
「びっくりした。居るなら居るって言ってよ」
口を開いたのはあずさ。
「びっくりしたのは俺だ。突然顔出しやがって…」
壁際に居た人物……まだそこまで背も高くなく、深々と頭にキャップを被っている。
あの警備員室で監視カメラを切った少年だ。
「調度いいや、今呼ぼうと思ってたんだよね、入って」
「は?」
少年はあずさに促されるまま美織に宛がわれた部屋に入った。
扉が閉まる。
無人の廊下……