―ユージェニクス―
少年に続いて美織も角を曲がり走り続ける。
直進の方向に小さく茶の扉が見えた。

「あれだ、あの扉…」
そう言った時、少年は背後に気配を感じて素早く振り向く。

そして小さく舌打ちし立ち止まった。

「えっあの……」
「あんたは行け、あの扉を真っすぐ行って、突き当たりを…」

「おまえ達何をしている!」

あの黒服の一人が追いかけて来た。
当然ながら見逃してくれる気はなさそうだ。

「貴様何者だ?!まさか侵入者……」
「早く行け!」

少年に鋭く見られ、美織は飛び上がって駆け出す。

「ありがとう…っ」


なんだか申し訳ない気持ちになりながらも、美織は扉に向かった。

ノブを回し勢いよく開ける。

道は目の前に一本あり、左右に扉や曲がり角はあるものの、言われた通り突き当たりを目指した。

「はぁっはぁっ」

今までと違って鉄色の壁や小汚い扉が並んでいる。
ここは屋敷の裏側と言った所なのだろう……


突き当たりに来ると、道はT字路に別れていた。

あの少年は確か……

「! どっちに行くか聞きそびれた……!!」

だがこの左右どちらの道かが裏口へと続いている事は間違いないはず。

と……


「ねェ、ほんとにこっちに居るのかナァ〜」
「知らないわよ、てかなんでアンタまでアタシと同じトコ探してるわけ?」

人の声……
まずい。

「だっテ峯と居た方が見つかルと思っテ…」

「どっどうしよう…!」

隠れるところなど咄嗟に見つからないし、声がどこから近づいてくるのかも焦って方向が分からない。

(下手に動いて鉢合わせしても……でもこのままじゃ!!)


「こっちよ」


不意に、手を引かれた。

「っ!」

美織の手首に小さく痛みが走る。

「あ、ごめん…怪我してるの?」

「だ、大丈夫……」

言って美織が顔を上げると、そこには一人の少女が立っていた。

黄土色の髪、黒い瞳……

(誰…?)



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