―ユージェニクス―
―6―
「全く…あのあずさという娘、自分勝手に黒川様の予定を崩しおって…しかもまた茉梨亜は消えるし…おや紀一様」
廊下を進みながらブツクサ言っていた蓋尻の前に、一人の青年が現れた。
紀一と呼ばれたこの男。
無駄のないセットを施した黒髪に、スラリとした長身のダークスーツ姿。
顔立ちは女でなくとも振り返ってしまう様な端正さを持っているが……その中に妙に誰かを思わせる面影を残す。
「蓋尻、茉梨亜がなんだって?」
紀一はそう聞き返した。
「…またふらふらと部屋を抜け出しましてねぇ。今峯らが探しておりますが」
やれやれと言った顔で蓋尻は説明する。
茉梨亜が部屋から消えるのはいつもの事で、かと言って彼女が屋敷から出る事もないのであまり切羽を詰めている様子はない。
「そうか、また……散歩が好きだな、茉梨亜は」
紀一は咎める事もせず口の端を上げた。
「蓋尻、久しぶりに俺も茉梨亜と話がしたい。父さんに貸してと頼めるかな?」
「あぁ、それでしたら本日は大丈夫ですよ。夜は新しい娘らに黒川様のお相手をさせる予定ですので」
それを聞いて紀一は多少飽きれ顔を作る。
「父さん、またすぐ飽きるんじゃないか?前の娘らはどうなったんだ」
「彼女らは精鋭共の相手を」
「ふん…彼らのやり方は好きじゃないな…品がない。ま、元スラムの住人では仕方がないか。蓋尻、茉梨亜に俺の所へ来て欲しいと伝えてくれ」
「かしこまりました」
要望を伝え去っていく紀一に、蓋尻はニタリと笑って頭を下げた。
廊下を進みながらブツクサ言っていた蓋尻の前に、一人の青年が現れた。
紀一と呼ばれたこの男。
無駄のないセットを施した黒髪に、スラリとした長身のダークスーツ姿。
顔立ちは女でなくとも振り返ってしまう様な端正さを持っているが……その中に妙に誰かを思わせる面影を残す。
「蓋尻、茉梨亜がなんだって?」
紀一はそう聞き返した。
「…またふらふらと部屋を抜け出しましてねぇ。今峯らが探しておりますが」
やれやれと言った顔で蓋尻は説明する。
茉梨亜が部屋から消えるのはいつもの事で、かと言って彼女が屋敷から出る事もないのであまり切羽を詰めている様子はない。
「そうか、また……散歩が好きだな、茉梨亜は」
紀一は咎める事もせず口の端を上げた。
「蓋尻、久しぶりに俺も茉梨亜と話がしたい。父さんに貸してと頼めるかな?」
「あぁ、それでしたら本日は大丈夫ですよ。夜は新しい娘らに黒川様のお相手をさせる予定ですので」
それを聞いて紀一は多少飽きれ顔を作る。
「父さん、またすぐ飽きるんじゃないか?前の娘らはどうなったんだ」
「彼女らは精鋭共の相手を」
「ふん…彼らのやり方は好きじゃないな…品がない。ま、元スラムの住人では仕方がないか。蓋尻、茉梨亜に俺の所へ来て欲しいと伝えてくれ」
「かしこまりました」
要望を伝え去っていく紀一に、蓋尻はニタリと笑って頭を下げた。