―ユージェニクス―
今、よくここまでメンタルが復活したものだと咲眞は改めて思う。

咲眞と拜早にとってここは地獄だったが…
今ここにいる女達もそんな状況なのだろうか……

そう考えながら、咲眞は扉が開いた部屋を通り過ぎようとした。


「?!」

突然その開いた扉から白い腕が飛び出てきて、咲眞を部屋の中へ引っ張り込む。

勢いに踏み留まれず、咲眞は掴まれた腕に捨てられるまま床に倒れた。

「! ったー…なに…?」


顔を上げようとすると咲眞の目は白い足を捕らえる。

上半身だけ起こして見上げると、全身の肢体をあらわにした二人の女子が、冷たい目で見下ろしていた。


「ぶ…ッ」
咲眞は吹き出しそうになる。

(裸族…?!)

何も身体に纏っていないにも関わらず堂々と立っている彼女達を見て、咲眞の頭にはその単語が過ぎった。

「なんで服着てないの?」

で、聞いてみた。

彼女達は咲眞の問いに険しく眉を顰める。

そして……

「!!」
一人の女子が咲眞の背を踏み付けた。

「なんで服を着ないのって?着ても無駄だからだよ」
「すぐ別の精鋭が来て抱かれるし」


あぁ成る程、と咲眞は妙に納得する。
咲眞の目線の先には散らかった衣服やベッドシーツが見えるが、いかんせんこの彼女らとのこの角度じゃ自分は頭を上げれない。

だって……ねぇ。


「あんたこそ男みたいな格好して……でも今日入った新入りでしょ?精鋭が噂してたわ」

「わたし達がここでの立場ってのを教えてあげる」

そう言われて背中に衝撃。
蹴られた。

「ちょ…」
流石に咲眞も動揺する。
なんだか面倒な事になってしまった。

「痛いんだけどっ…蹴らないで貰える?」
「はぁ?」
抗議した咲眞に、二人の女子は薄く笑う。

「センパイのあたしらに盾突く気?」
「ありえない」

今度は脇腹に一撃。
…センパイと言うなら、この子らより自分の方がそうだろうなと思いつつ。

この二人、自分より少し年上くらいに見える。
いつも慰みものにされている腹いせに、新入りを痛振る…そんなところか。

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