―ユージェニクス―

こうなったら一人だけでもはっ倒して逃げ道を作るしかない……

「（今日は武器も持ってないし…）」

そう考えて、茉梨亜は拳を握りしめた。


「おっと、何をする気かなァ？」

一人の男がそれに気付き、茉梨亜の右手をむんずと掴む。
「！」
その瞬間茉梨亜は後ろの男に背中から抱き着かれた。
「ちょっとやめてよ！！！」
「いぃぜぇ抵抗してくれても、その方がやり甲斐があるってもの……」



「やめといた方がいいよ」



静かな、幼い声が響いた。


「……！？」
「誰だよっ！？」


男子とも女子ともとれる声。

声の主は男達の前に現れた。


「ゥげっおまえは……！！！」

「（何、誰が来たの？）」

男達が邪魔で茉梨亜には見えない。
変わりに何故か男達はその人物を知っている様で、妙に怯えだした。

「その子もボクと同じで“持ってる”よ。忘れたの？前の事……それでもいいっていうのなら、ボクは構わないけどね」


その言葉を聞いて、男達は一斉に茉梨亜から離れた。

その茉梨亜が見た人物は……

「（白の…怪物？！）」

一瞬茉梨亜はそう思ってしまう。
白髪の子供が立っていたからだ。

「（…違うわ）」

すぐに子供を見つめ直す。
青がかった茶色の目、１２、３歳くらいで、白髪を肩口で切り揃えている。
勿論全身白い服なんかではない。


「シティリアート…何でこんな所にッッ……」
男の誰かが口走った。

「久しぶり、おじさん達。何でって、ボクだってたまには散歩ぐらいするからさ」

少女の声なのか、声変わり前の少年の声なのか……
そんなトーンでシティリアートと呼ばれた子供は一歩茉梨亜と男達に近づく。
「ヒィッ！」
男は思わず短く叫んだ。