―ユージェニクス―

黒川は白いワイシャツを纏いつつ黒電話の受話器を握り締め、険しい顔で問い掛ける。

「どうなっている？蓋尻に繋ぎたまえ！」

電話の向こうでは黒服と思われる男が必死に応対していた。
が、黒川は今の状況がどうなっているのか全く理解出来ていない。
ただ自分は夜まであの新人二人を待つ間、他で楽しんでいたというのに。

なんだあの少年達は。

悠々と酒池肉林紛いを楽しみ遊び倒していた黒川には、野望を持っていた昔の頃の覇気はほぼ感じられなくなっていた。

「繋がらないだとっ？峯と高城はどうした！」

『そっそれがやはりどちらにも……』

「くそ…使えん奴らめ！」

苛立ちに任せ受話器を投げ切ったところで、再び扉が喧しく開かれる。

「……！！」

「お邪魔しまぁす」


再度現れた金メッシュの少年をゆっくりと見やり、黒川は歪んだ笑みを浮かべた。

「……ようこそ、侵入者君」



ずるずると這い擦る。
ベッドからソファーへ。

「おい…」

少年はソファーの上でぐったりとしていた少女へ声を掛けた。
しかし少女は涙し…目を合わせてくれない。

「……」

小さく首を振り、まるで見ないでと言う様に口元だけで声にならない言葉を紡いでいた。

少年の顔には悲愴が過ぎったが、それでも少女の身体を抱き留めた。

「大丈夫…大丈夫だから…っ」



「……」

その様子を視界の端で捕らえた咲眞は一度冷たく目を細め、黒川を見据える。

「まだこんな事してるんだ」

少年と少女。

黒川の部屋でこの組み合わせは、何をやっていたかなど容易に想像出来た。
拜早ではないが…その気になれば自分も吐けるだろう。


「進歩しないね」

皮肉的に咲眞は微笑む。

「何なんだ？君は…」

「あれ、覚えてない？」
現れた少年の言葉。

「何を……、！」

黒川はすぐには思い出さなかったが、気がついた。