―ユージェニクス―
―12―
もうどれくらいここに居るだろう。
決して長くないはずなのに、短いなんて思えない。
『やめろよ…ふざけんな…!!』
拜早を
『茉梨亜…どうして僕らの顔見ないの…?』
咲眞を 裏切った。
分からないの。
拜早より咲眞より、黒川に抱かれる事を選んだ私を
どうして自分で許したのか分からない。
でもこれは罪。
私は溺れたままでいい。
深く 掬わないで
誰も
もう光は求めないから
太陽は求めないから
だって……怖い。
光は
二人は怖いから。
あぁ……そう、大丈夫。
光は来ない。
来るはずがない。
こんな私を掬いになんて……
救いに、なんて
来るわけないのに。
あぁ、要らない心配して
無駄に怖がっちゃったわ。
私は汚れたの。
あの頃のあたしじゃなくなったの。
二人は来ない。
もう 溺れた私を見られる事もない。
――けど。
どうしてだろう。
今のこの侵入者が、あの二人だったら……
なんて考えてる。
そんな、あるはずのない事を……
もし二人だとしても、私はどうする事も出来ないのに。
「――聞いたかい?茉梨亜」
紀一の声は、低いけど…
どこか拜早に似ていて、不快だった。
「これ、峯のインカムに今繋いでたんだけど」
紀一は片耳に小さな通信機を着けている。
音は外部接続になっているらしい。
けれど。
峯が喋る声しか聞こえない。
――峯……今侵入者と対面しているのね。
黒川を護る為に。
「侵入者の名前……」
「…」
「関根と邦浦…と言うらしい」