―ユージェニクス―
「それで……茉梨亜は生きたいって?」

「まぁ、そんなとこ」


拜早の返答後、ふ と間があり。
咲眞は噛み殺す様に笑った。

「…咲眞、その笑い方恐ぇ」




「君達…」

咲眞の下で紀一が薄く口を開く。

「雑談は終わりだ。いつまでも侵入者を放っておく黒川邸(ここ)だとでも思っているのか?」
「!」
「……」
拜早は眉間を顰めたが、咲眞はただ紀一を見た。

「こんな事を仕出かして、どうなるか理解しているのかな」

紀一は不利な体勢のはずがそれでも余裕を浮かべる。

「あ、それ黒川さんも似た様な事言った」

苦笑したのは咲眞。

瞬間そんな咲眞の隙を突き、紀一は懐に隠し持っていた小型銃を引き抜いた。

「!」
「咲っ!!」

銃口の狙いは咲眞の眉間。
寸でに拜早は咲眞の身を後ろへ引かせる。

「っ!!」

『ガゥンッ!!』

「茉梨亜はずっと俺の傍に居る!いい機会だ…おまえ達もずっと此処に繋いでやるよ!!」
銃弾は空振り、部屋の壁を穿つ。しかし紀一の指先は迷う事なく次の引き金へ…

「ち!!」
これではと、咲眞も身体が後ろへ倒れながらも銃を構えた。

交差する銃口と的。

「い、いや…!!」

ほぼ叫びに近く口を衝き、傍観であった茉梨亜が立ち上がりかける。
だが腰が抜け、前のめりになるだけ。
「…ッ!!」
なら言わなければ。制止の言葉を。
「待って…!!」

これでは。

――このままでは。


「やめてー!!!」



――ドンッ


鈍い音。

次に銃声が一発。


それを最後に



音は消えた。
















「…………」




「ちょっと……」



「わ、わりぃ」





< 197 / 361 >

この作品をシェア

pagetop