―ユージェニクス―

「……けどね、あたし…恐がりだから」

そっと。

茉梨亜は紀一の持っていた小型銃を取る。


「ま、茉梨亜…?」

困惑する紀一は、それでも茉梨亜の穏やかさに行動を止める事が出来なかった。


「……」

銃を構えた茉梨亜の目付きが細まる。

そして指をトリガーに。

銃口は下へ向けられていた。


『ガゥン!』

続いて後に三発。

その場で茉梨亜の手により、計四回引き金が引かれる。

…この銃の弾は全て使われた。

空の薬莢が軽い音を立てて床を跳ね、その床に現れた銃痕からは薄く細い煙りが上がっている。

「…紀一の銃はこれとあれだけよね」


茉梨亜の視線は咲眞の手元へ。


「茉梨亜…何する気だ」

低く訊ねたのは拜早。


「あたし?あたしは何もしないわよ」

困った様にクスリと笑う。

「言ったでしょ、あたし恐がりだって。だから咲眞、その銃で」


茉梨亜の意図。

それは……それはとても。


「あたしを殺して」



とても重く。




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