―ユージェニクス―
「ちょっえっ何弾ってばロリコンだった…?!」
「いやそーでなくてだな」
「やだごめんなさい私ってばてっきり……」
「だから違うって」
「香(きょう)さーん!!弾が少女趣味……」
「棗ちゃん聞いて?ね?」

かなり取り乱してみた棗を宥(なだ)め、管原は椅子に腰を落として一息吐く。


「棗、その“女の子”の詳細は聞いてるか?」

「え?いいえ…その場に居合わせ怪我をした、拜早君と同じ歳くらいの女の子だって」

「……そいつだがな……実は茉梨亜だったんだ」
「名前分かったの?」

少し間があって、管原は話が噛み合ってない事に気付く。

「いや…だから、新庄茉梨亜だったんだよ。その女の子が」





「………は」


棗は管原の言っている事が飲み込めていない様だった。

「…何言ってんのよ、茉梨亜ちゃんは……」
「まじ、これまじ、だって本人がそう言ったんだぜ!」
否定的な棗に対し、管原はペンを片手にはっきり言ってのける。

「弾……あなたとうとう頭まで悲しい事に」
「信じてねーな…ほんとそっくりだったんだって髪型とかも」

管原を見つめた棗は、少しだけ首を横に振ってジト目で管原に聞いた。

「つまり弾は茉梨亜ちゃんにキスしたと」
「あれはーどんな反応がくるかなーなんて……」
「可哀相な茉梨亜ちゃん」
「棗ちゃんさり気に酷い……」
すっかり畳まれた管原は、最後のサンドイッチを頬張りながらちょっと泣いた。


「しかし…なんだ棗、今日はやけに突っ掛かるじゃないか?」
いつもはもっとこうやんわりと…と添える管原に、棗は非難の目を向けながら口を開く。

「だって弾、その…仮に茉梨亜ちゃんだとしても、その子に拜早君を捕まえるとこ見られたんでしょう?」

棗はこれが本題なのだと言わんばかりに口調を強めた。

「拜早君…通称白の怪物ってのが捕まえられた現場を一般人に目撃された…これがどういう事か分かってるの?」

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