―ユージェニクス―
「…………え?」
「……はあぁ」
咲眞が大きく溜め息を衝いた。
顔に手の平を当てて、拜早の発言がそれこそ馬鹿な事だと言う様に。
「な……っ」
そして。
「な、何を言ってるんだ君は!!君こそ馬鹿か!!」
「うるせぇなあんたは黙ってろ!人に殺してくれとか頼むこいつ程馬鹿な奴いねーよ!咲眞を人殺しにする気か!?」
「っ!」
言われて茉梨亜は押し黙る。
止まっていた筈の涙がまた溢れてきた。
「はあぁぁ………」
また咲眞の溜め息。
これでもかというくらい呆れた顔をしている。
「だっだって……あたし自分で死ぬの恐いもん!二人はあたしを殺しに来たんでしょ!?なら調度いいじゃない!!」
「ッたくおまえはいつまで勘違いしてんだよアホか!!!」
涙目ながらも凄い剣幕でまくし立て出した茉梨亜へ、拜早は容赦無い罵声を投げた。
「なっなによ!!」
「もーいいほんと駄目、俺疲れた、馬鹿相手疲れた」
「あっあたしだってもうどうすればいいか解んないのよ!でもあたしは戻れないし…」
「いや戻って来いって!!」
「はぁあ!?拜早今死ねって言ったじゃない!!」
「だから死ぬなら自分で死ねって言ったんだ!そんな度胸もねぇ奴が人任せに重いもん背負わせるな!!」
「!!」
弾かれた様に茉梨亜は止まる。
それで泣き死にそうな頭の中身が停止した。
けれどまだ錯乱している。
定まらない。
分からない。
何処へ行き、何処に留まり、如何すればいいか。
咎は希望を許さない。
プライドは希望を関止める。
でも、希望が、一番の望みが
帰りたいと
戻りたいと言っていた。
だがそれは許されない。
許してはいけない。
新庄茉梨亜は望みを破棄してでも、自分が罪と思うモノを許せなかった。
なら、選べるのは
拜早の言う通りのものだけ……?