―ユージェニクス―
「ハイハイ……まったく、皆して馬鹿なんだから」
軽く手を叩いて咲眞が言い合いに終止符を打つ。
「拜早、茉梨亜に生きてて欲しいなら変な事言うもんじゃないよ」
「っけど咲」
「ま、むしゃくしゃするのも分かるけど冷静になって」
一人涼し気な顔をして咲眞はそれぞれを見やる。
「でさ、茉梨亜は消えたいんでしょ。僕達は茉梨亜が居ない世界なんて嫌だし、それは息子さんも同じ……ならさ」
咲眞は、…気のせいかも知れないが、ウキウキとした薄い笑みを浮かべながら立ち上がった。
「皆一緒に消えちゃったらいいと思うんだよねぇ」
そんな事を言いながらポケットから妙な物体を取り出す。
手の平に納まる程小さく、四角いプラスチックの様な……
「じゃーん。起爆スイッチ〜」
物凄い棒読みで、物凄い物騒な単語を口にした。
「「「……え?」」」
謀った様に三人がはもる。
「お、おま、それ……!!」
「これは前ここに来た時設置しといた爆弾のスイッチです」
説明書でも読み上げるかの如く淡々と咲眞は喋りだした。
「爆塵が物質に当たると誘爆する様調合してるので、規模としてはダイナマイト6ダースくらいになります」
「なんだと…!?」
いつの間にそんな物を仕掛けていたんだという紀一の驚きに、
「6ダースって……!!」
茉梨亜の血の気の失せた声が合わさる。
「おい、おまえが冷静になれ…」
咲眞の背に低く言ったのは拜早だが、拜早もなんかもう咲眞の行動が突拍子過ぎてついていけない。
その爆弾が先日の――
城で咲眞が暴走し時限式を作動させたそれである事は、対峙した拜早には明確だった。
ただ、すっかり忘れていたそれを今持ち出されるとは。
スイッチとやらもいつの間に作ったのか。
6ダース。
12×6のダイナマイト。
「これをポチッと押せば一階の廊下から木っ端微塵に吹っ飛ぶってわけ」
「――!!」
「さぁ、どうする?」