―ユージェニクス―
――あの屋敷から帰ってきた。
お互い無事、というわけでもないし、なにより『茉梨亜を連れ戻す』という目的が達成出来なかった。
だが二人は何も言わない。
大きな反省があるわけじゃない。
心残りも特にない。
そりゃ。
茉梨亜には来て欲しかったけど。
けれど今は
これでいい、と思っている。
「ぅうわ何これ!!」
「バナナだろ!!ぜってーバナナ!!」
「違うでしょ黒い終わったモノでしょ!!」
冷蔵庫前で騒いでる男子二人。
さっきまで波乱の中に居たとは思えないくらい緊張の抜けっぷりだ。
「おい」
そんな彼らに背後から声を掛かけたのは、
「!」
会った時から表情が変わらない眼鏡の男だった。
「…あ、これ?どうぞ」
咲眞がナチュラルに差し出したそれは黒い終わったモノ。
「あぁ…、?」
を反射的に受け取ってしまった勅使川原。そのまま、
「関根拜早、ベッドに寝たまえ…君は向こうで待っていろ。こちらには来るなよ」
と低い声で支持された。
「…」
思わず黙る二人。
「ねぇ拜早、僕この人と会話を弾ませる自信ない」
「いや別に弾ませなくてもいんじゃね?てかなにバナナ(?)渡してんだよ」
ぼそぼそっと言い合った隙、勅使川原が持つ黒い物体は塔藤の方へ投げられた。
「さぁ、早くしろ」
「「…ハーイ」」
しかし。
大怪我の拜早を先に処置するのは当然だが、何故咲眞はここに居てはいけないのか。
「まぁ銃で撃たれた傷なんてまじまじ見るものでもないけどさ…」
言う事を聞いて咲眞が白い仕切りの向こう側へ移動すると
「じゃ、その間俺が君の方診るから」
先程診療所前で初対面した、金髪の男に微笑まれた。