―ユージェニクス―
「弾くん……あたしね、」

「何だ、あの二人の前に出にくいのか?」

はた、と茉梨亜は目を見開く。

管原は患者用のベッドを適当に整えながら、何の気無しに言ったみたいだったが。

「スッ……スゴイ弾くん正解っっ!!」
「フッ俺ってば天才っ」
カッコイイ顔をした管原はタオルケットを畳んでいた。

「つかおまえ、そんなんで悩むくらい繊細だったっけ?」
「む、失礼ね!」
薄く笑う管原に向かって口を尖らせる茉梨亜。

「だって事が事なんだもん!あたし、汚いし……」

「……」

と普段通りだった茉梨亜の口調はみるみるしおれていく。

「二人はね、待ってるって言ってくれたの。でもあたし、まだちゃんと二人の顔見れそうもない……」

茉梨亜はやはり空元気でここまで来たのか。

自嘲気味に笑う茉梨亜には、うっすらと隈が現れていた。


「ごめんね弾くん、あたしウザいよね……こんな事相談するの、おかしいもん」
「茉梨亜…顔見れそうもねーんだったら見なくていいんじゃね?」



「……え?」

思わず相手を見上げる。

管原はこちらを見ず、畳んだタオルケットを手にしたまま。


「もう頭使おうとしなくていんじゃね?おまえ、いっぱい考えたんだろ……だったらもう止めたらいい」

一瞬、管原の目が遠くを見た気がした。


「止めたらいい……って?」

「おまえの思ったまま行動しろよ。人の事考えたり体裁気にしたり、ウンザリしねぇ?茉梨亜」
言って、皮肉の様な笑いを掛ける。


「俺には詳しい事汲み取れねぇけど、おまえの事だ、なんだかんだで悩んだり誤魔化したりしたんだろ」

「……弾くん」

目を、丸くするしか出来なかった。

「気にしないで好きなようにしろって、言ってるの……?」

「おぉ」

そこで管原はタオルを置く。

患者用のベッドは綺麗に整頓されていた。


「茉梨亜はどうしたいんだ?」

「え?……あたし?」

「そう、おまえ」

顔を見られて押し黙る。
眉を顰めて少しだけ思案して。

「二人に会いたい……また三人で居たいよ。でも……」


< 238 / 361 >

この作品をシェア

pagetop