―ユージェニクス―
「でも?待ってるって言われたんなら都合いいじゃねーか。会いに行けよ」

「でもっその……何ていうか、後ろめたい?というか、恥ずかしいというか……」

悶々と仕出した茉梨亜を見下ろし、管原は短い黒髪をポリポリと掻く。


「恥ずかしいねぇ……まぁ解らんでもないが、あいつらもおまえが居ない間恥ずかしい事したと思うぞ?」

「??どういう事?」

意味が分からず茉梨亜は身を乗り出した。

「ねぇねぇ!」

「ッいや、俺これで口滑らしたらあの黒い笑顔に殺されそうな気がする…」
明後日の方向を見ながら管原は半笑いで汗をかいた。

「???」

「と、兎に角だ…あいつらがおまえを迎えてくれるなら願ったり叶ったりじゃねーか。勿体振らずに行け行け」

「う……」


茉梨亜はまだ納得してなさそうな顔をしている。

「(そりゃそうだわな……気持ちってそんな簡単に切り替えするもんじゃねーし)」

腕を組んで溜め息を吐く。
その溜め息は、ちょっとした決断だった。



「……茉梨亜。あいつらが無条件におまえを迎えたとは思うなよ」

「え……?」


「あいつらはな、二人共精神的にちょっと狂ったんだよ」

実際はちょっと、どころではなかった。
咲眞は別人格を模写していたし、拜早は殺人衝動を起こしていた。

「狂った…?じょ、冗談言ってるの?」

だが茉梨亜にはあの二人がおかしくなるなんて、上手く想像出来なかった。


「本当だ、茉梨亜。二人しておまえを消そうとしていた」


「…………」


「黒川のもんになったおまえが、嫌だったんだと」



「…………そう」

……なら、黒川邸で二人が自分を消しに来たと感じたのは、あながち……


「それだけおまえが好きだったって事だ」






「……」


「消してしまいたい程綺麗だったんだおまえは。でもあいつらは結局悟ってたよ。おまえを迎えに行くって言って黒川んとこ乗り込んだ。何でだと思う?」


「……わから、ない」



「綺麗だろうが汚いのだろうが、あいつらにはおまえが居る事が重要だったからだ。それに気付いて、おまえを迎えに行った」


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