―ユージェニクス―
「お疲れ様。……シティリアートがどうかしたかい?」

穏やかな顔を浮かべて来たのは、データ収集班班長の……

「とっ塔藤さん!」

明らかに顔付きがキラキラと変わった公島を白い目で見やり、棗は顔を上げる。

管原といい塔藤といい背が高い男達だ。

「ちょっとした世間話。お疲れ様塔藤君、移動中?」

「いや、休憩中。さっき壱村君と擦れ違ったよ、仕事終わったみたいだね」

「……えぇ」


少しだけ影を落とした棗を見下ろし、塔藤は口を開く。


「気になる?」


「……え?」



「塔藤さん!!」


今まで口をパクパクさせていた公島が飛び上がった。
おかげで棗はビクリと驚く。


「は、なんでしょう専務補佐……」

「そんなっ公島でいいですよっ!なんなら由希子って呼んでくれても…」
「はぁ?」
いきなりテンションを上げだした公島の意味が棗には分からない。
そんな彼女にきょとんとしている塔藤は片腕を掴まれた。

「休憩中なんですよね!これからお茶でもいかがです!?」
「え、でも」
「さぁ行きましょう!」

問答無用。公島はこれでもかというくらい煌めいている。

そのままずるずると、塔藤は公島に飲み込まれていった。


「……何よ由希の奴、塔藤君らぶなの?」

一人残されてぽかんとする棗は、公島の煌めきのワケを見出だす。

そして大変だなぁ彼も、という意味合いを込めて、小さく溜め息を衝いた。
















「そんなとこ居て、寒くない?」


呼び掛けに振り向く。


と同じくして、自分の横に彼は座った。


スラムが一望出来る瓦礫の場所。

聳え立つ高い高い城の上。


金メッシュの入った黒髪が風に靡いている。

なら自分の白髪も、結構風に遊ばれているんだろう。
そう思った。


「……なぁ咲眞」

「なぁに?」


足の下は灰色のスラムの地。


けれど空は青くて。



「俺さ、すんげー気になってる事があるんだけど」



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