―ユージェニクス―
「……なぁ、催眠ってどうやるんだ?」
夢の拜早がなんとなく訊ねてみる。
何故なら洗脳や催眠と言われるとどうしても……
「む、君は洗脳をオカルト染みた方法で行っているとでも思っているのかね?」
まぁ、そうだ。
「まったく、非科学を持ち出さないでくれたまえ。きちんとした信号を送って脳に働き掛けているのだよ」
心外だと言わんばかりに間宮は肩を竦めて見せたが、洗脳の内容が内容なので“きちんと”という表現はどうかと思う。
「ま、洗脳の発動後、君は疲弊して昏睡に到るからな…知らないのも無理はないが」
「……」
オカルト的でないと言うのなら、ベッドに寝かされ頭にコードやらなんやらを貼付けられていたりするのだろうか。
で、繋がった機械から信号なり電磁波なりを発信させて……
そんな拜早の想像はあながち間違ってはいないだろう。
(でも研究所っていったって、そこまで民間人に勝手な事していいもんなのか?)
――その答えは否、である。
だが今拜早の思考能力は削がれている。
拜早の頭に浮かんだ疑問は異常な問題点にも関わらず、白い少年は既に考える事を止めていた。
「……で、さっきの何故髪を採取するに加え、ある程度傷を与えるのか……の答えなのだが」
「ああ」
思い出した様に拜早は返事をする。
「髪の採取を誤魔化すという理由に加え、傷を与えると少なからず害者の体液が飛ぶだろう」
間宮のその一文で、嫌に理解した。
「まさか…服に飛んだ体液も検査してんのか?」
「その通り。主に血液と唾液だな。君のその白い服はそういった検査事に利用し易い特別製なのだよ」
……人のデータを採る為に髪の毛を採取したり暴行をさせている?
そんな事って……
「そんな暴力的に収集しなくても、普通にデータは取れないのか…?」
「……それが出来たらこんな回りくどい事などしない。こちらにも事情が色々とあるのだよ」
それを最後に、間宮はパフェを完食した。