―ユージェニクス―
「…………」
関根拜早が目の前から居なくなっても、間宮はその場から動けずにいた。
ここからの事は、拜早は知らない。
「……関根」
ぽつりと間宮は目を見開いたまま呟いて、白の怪物が去った方向を勢いよく振り返る。
「…ま」
ま。
「まずい…!あの発動のムラに加え危険な発言!!もしもの為に捕獲班でも作っておくか!?」
「おー間宮サンじゃねえか!相変わらず不自然な頭してやがんな」
動揺中の間宮の頭上から、あまり相手にしたくない声が降って来る。
「む!収集班じゃないか……そうだ!君がきちんと443に説明しないからだぞ管原弾!!」
「はぁん?なんの事だあ?」
間宮の不自然な頭をペチペチと触って、そのあっけらからんとした発言の男はさっさと別の席に着いてしまった。
「こらっ僕の頭を触るな!」
「ふーん、説明したんだ。でも君の説明であの子は理解出来たのかな?」
間宮の傍に金髪の男が立っていた。
「何を言っている収集班!説明は……」
「どうせすぐ記憶混濁で忘れるんだ、無意味だろう…あれに話をするのは」
男の表情は髪色と違い穏やかだったが、声色はどこか冷たい。
「それに知らなければ幸せな話もある」
「……ふん、被験者への説明は義務だ。だいたい、内容を理解して協力して貰うのが本当の筋であるからして……幸せがどうなどとそれこそ関係のない話だっ」
苛々しげに立ち上がり去っていく間宮を、金髪の男は薄い笑みで見送った。