―ユージェニクス―
「……何物騒な話してるの」
どこに居たのか髪に金メッシュの入った少年が出て来る。
彼も起きたてなのだろうか……
妙に存在が儚い。
というか亡霊染みていた。
「あ、咲眞」
「さっきから聞いてたらまったく……折角再会した次の朝でしょ?何か恋人っぽい会話でもしたら?」
咲眞がしかめっつらな理由はそれなのか。
わざわざ身を引いて見守ってあげてたのに、と背後のオーラが語っている。
「なっ何言ってるの咲眞!どっどうして恋人っぽい話なんかしなくちゃいけないのよ!」
案の定茉梨亜は赤面しながら弁解した。
茉梨亜は咲眞に対し表情だけは素直である。
「咲……なんでそんなむくれてるんだ」
「ふん、二人して全然進展無いなんて嫌になっちゃうな。もういい、僕は下に居るから」
珍しく咲眞は二人を茶化さず、機嫌の悪そうな顔のままふわふわと階段を下りて行った。
「って……下はヤンキー達が溜まってるじゃねーか。混じってくる気かアイツ」
いつの間にか城に住み着いていた不良達には、特にお咎めもしないまま城を開放している。
そういえば咲眞の見た目だけならヤンキーに見えなくもない。
本人があんな口調なので外見は二の次だが。
「一応かわいいカオしてんだけどな」
「えっ!?」
茉梨亜が頬を赤くしたのを拜早は白い目で見る。
「いや、咲眞が……」
「咲眞……!? なに拜早……いい加減怪しいと思ってたけど、咲眞の事好きなの?」
……もう何も言うまいと拜早は思った。