―ユージェニクス―
「うーわ久しぶりだな、おまえらが揃ってるの!」
管轄の診療所に現れた三人組に、管原は目を見開いた。
「……っ」
調度居合わせた棗も椅子から腰を上げる。
「あ、姉さんも来てたんだ」
「お、お久しぶりデス!」
ぺこりと茉梨亜が頭を下げる。
棗は暫く固まって脳内処理をした。
「えぇっと……私は茉梨亜ちゃんには全く会ってない事になるのよね…?」
棗が数週間前顔を合わせていた“茉梨亜”は、言わずもがな咲眞だったわけで。
「久しぶり茉梨亜ちゃん!!」
処理が終わった棗は勢いよく茉梨亜を抱きしめた。
「う…うん!元気だった?棗さん!」
「それがねー色々あってねー!」
「なんだあいつら元気じゃねぇか」
二人のやり取りを見ながら管原は気の抜けた顔で呟く。
「あれ、それどういう意味?管原さん」
管原の言い分は最近の茉梨亜や棗を知っている様なものだ。
「あー、茉梨亜俺んとこ来たんだよ。昨日」
その一言に、咲眞と拜早の空気は凍る。
「茉梨亜…昨日城に来てからずっと俺達と居るよな」
「それって管原さん、僕達より先に茉梨亜に会ってたって事だよね」
まぁそうなるな、と管原は頷くと。
「うわぁ……僕達の所に来るか迷ってた傷心の茉梨亜を先に管原さんに取られるなんて…!」
「茉梨亜、管原サンの後押しあったのか…管原サンの言葉でも効くもんなんだなぁ……」
「でもってなんだ、でもって。しかしおまえら素晴らしい推理してんな」
管原は皮肉で言ったがあながち外れてはいない少年達の感想。
「ところで管原さん、姉さんも元気なかったの?」
ふと咲眞が顔を上げるが、管原からはろくな答えが返って来なかった。
「さーなー最近暗かったからなーおまえの姉ちゃん。まぁ女の子の日だったんだろ」
「あー」
「サラッと何言ってんのよ!咲眞も頷かない!!」
角光るティッシュ箱が投げられたのを、的であった管原は間一髪で避けた。