―ユージェニクス―
「でもね、あたし……安心した」

「?」

「二人もそうだけど、弾くんも棗さんも、あたしの戻って来ていい場所だと思ったから」

目を細めた茉梨亜はきちんと拜早と咲眞を見ていた。


「……って言うのは厚かましいかしら?」

「……」


「……そんな事ないよ。僕らも茉梨亜と同じだから」


咲眞は、何も言わなかった拜早の代弁を含めていた。


互いが互いを好きではなかったら
少しでも嫌悪していたのなら

今ここで皆が揃っていない筈だから。



「……みんな、優しいね」


「優しいにも色々あるよ?拜早なんか自称クールだけど実は優し過ぎるし」

「いや俺そんなの自称してねぇ」

「優し過ぎて自己犠牲に走るからね。酷いものだよ」

「知ってる!拜早って酷いよね」

「おい」

勝手に人の属性を決められて拜早は追いてけぼり。

まぁいつもの事なのだが。

「俺そんなにジコギセイ…か?」

「気付いてない!この人気付いてないわよ咲眞!」

「うん、拜早って人の事物凄い勢いで諭すくせに自分の事ウトイから」

「あのな、別に諭してるワケじゃ……」

と言いつつ、そういえば城で爆弾咲眞を止めた時とか、屋敷での茉梨亜とかになんかボロクソに言っていた気がする。


「…………」


「あ、黙っちゃった」


「ん?」


――――カタ。



小さく音がした。


そのまま扉が開く音。


「あ、あれ?誰か来たかしら」

「患者さんかな…管原さん休診中の札掛け忘れたかな」


普段管原が診療所に居ない時は、本人がそういった札を掛けているのだが。

茉梨亜がパタパタと玄関に行き、その訪問者を迎えた。

「あの、今担当の人居ないんで……す、けど……」

そう口にして、茉梨亜は止まる。

そこに居た人物は、白衣を纏っていたから。



「うん、知ってるよ」

少しだけ目を細めてにこりと。

見下ろされていた。


診療所に現れたのは、金髪に白衣を着た男だった。


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