―ユージェニクス―
―5―
「ナンバー443フェレッド、関根拜早……来なさい」
その言葉がどういう意味なのか……
「ちょ、ちょっと」
分からないままも茉梨亜は塔藤と拜早の間に立つ。
「何の話!?拜早がナンバーって意味分かんないんだけど!」
「茉梨亜……」
「色々あったってこういう事?二人共、もしかして研究所で何かされたの!?」
無性に焦りが出てきて、茉梨亜は早口なっていた。
二人はこの塔藤という男を知っているらしいが、茉梨亜は腑に落ちない。
「(この人、なんか怖い……)」
初対面にそう感じた。
睨む様に見上げると、塔藤はすぐ口を開く。
「何かされた、とは随分だね。……ともあれ君が意見出来る場ではないよ」
塔藤が背後へ目配せすると、ジャンパーの男達が前へ出た。
「…拜早をどうする気?」
静かな声色で咲眞が問う。
茉梨亜とは対象的に咲眞はその場を動いてはいない。
「拜早君は被験者だからね。これからも研究の手伝いをして貰う」
「手伝い?一体どんな…!」
茉梨亜がきつく言っても塔藤の態度は変わらない。
「それは一般人には言えないな」
「拜早だって一般人でしょう!?」
「言い方を変えようか。拜早君は既に協力者だ。最後まで俺達に協力する義務がある」
「なっ……」
「…塔藤さん、僕達は研究所に協力なんてした覚えなんてないんだけど」
塔藤を見据えた咲眞のその目も、あまり冷静ではなかった。
「そっちが勝手に、僕達を黒川さんの所から買い取ったんでしょ?」
「覚えはない、と……ふむ。君達は記憶の欠如があるね。それもデータになるな」
小さく笑いながら淡々と発言する塔藤に、茉梨亜はついカッとなる。
「なんなのあなた!協力してないって言ってるんだから、無理に連れて行くなんておかしいわよ!」
「無理に、ねぇ…?」
塔藤は薄く笑みを浮かべて拜早を見る。
拜早は微かに眉間に皺を寄せていた。