―ユージェニクス―
「……ッ」
悟ったかの様に茉梨亜の口からは何も出なくなる。
「……拜早君、君から出たまえ」
塔藤の厳然足る態度が、茉梨亜に無理矢理事態を飲み込ませ様としていた。
「…塔藤さん、僕はナンバーから抜けたのに、拜早がまだ被験者なのはどうして?」
静かに咲眞が立ち上がる。
「それだけ“拜早にした事”は重要なの?」
……訊いてみたものの、咲眞は認めたくない予想をしていた。
それは拜早が両足を傷めてから、ずっと咲眞の頭に在った不自然な疑問。
「……」
そこで始めて塔藤は苦笑を見せる。
「……確かに彼は“重要”だ。それは拜早君本人も解っている筈」
言って拜早を一瞥する。
「そうだろう?君の身体なんだから」
「……」
「……どういう事?あたし全然分かんないよ…」
「そうそう、咲眞君がナンバーから外れたのは、君があの時逃走したからだけじゃない」
ついと塔藤は咲眞を見下ろした。
「研究所は徹底的に君を捕獲しようと思えば造作も無かった」
「……」
「それをしなかったのは……咲眞君、君が外の人間だからだよ」