―ユージェニクス―
「…………ねぇ咲眞」
「……なーに?」
「拜早行っちゃったんだけど」
「そーだね」
診療所の机に顎を乗せながら、咲眞はつまらなそうに返答する。
「てゆーかあの塔藤って人なんなの?あの有無を言わせない顔っていうか、大体何で白衣着て金髪なの?」
茉梨亜はさっきからその場に仁王立ちになったまま。
「あの人管原さんの同僚らしいよー。でもこの間会った時はもっと穏やか〜な印象だったんだけどなぁ」
明らかにダレている咲眞。
に、茉梨亜は勢いよく向き直ってとうとうキレた。
「だから!拜早連れて行かれちゃったわよ!!」
「分かってるよ!」
咲眞もキレた。
「抵抗したってそりゃ意味なかっただろうけどさ、まぁ拜早の頭ん中は塔藤さんに下手に突っ掛かって僕らに迷惑掛けたくなかったとかだろうね」
「なにそれ!バカじゃないの!?」
「ぅわ…」
茉梨亜の剣幕に咲眞は引く。
診療所には茉梨亜と咲眞の二人きり。
「どーすんの咲眞!あのさ!あたし二人を護るって話したよね?」
「あーそんな事言ってたね」
「なのにコレ!」
「残念極まりないね」
「そーなのよぉぉぉ!!」
「はぁ……」
状況に対し不機嫌に咲眞は頭を掻いた。
「早速拜早護れなかった……どーしてくれんのあたしの決意!咲眞一人じゃ割に合わない!!」
「茉梨亜、言ってる事目茶苦茶。大体自己犠牲の話したばっかでこんな……黒川の屋敷の時もそうだし、研究所の時も僕だけ逃がして……結果がこの召集って」
咲眞が静かに鋭い顔付きになっているのは珍しい。
それ程余裕無く頭にきていた。
「いい加減僕も怒るからな……拜早」