―ユージェニクス―
「……ね、咲眞」
「?」
茉梨亜が自分を見下ろしていた。
「咲眞って外界の人だったんだね…あたし知らなかった」
「あれ、言ってなかったっけ」
「言ってな〜〜〜〜〜〜い」
「茉梨亜。折角可愛いのにそんな顔しちゃ駄目だよ」
茉梨亜があまりにも素顔と掛け離れていた顔を作っていたので咲眞はそっと制する。
「だって茉梨亜、言ったら気にしない?」
「しっしないもん。でも、なんでこっちに住んでるの…?」
外の人間なら棗共々用意された住居があるのだろうに。
「……それじゃあつまらないから、ね」
三人でつるんでいる方が楽しいのなら、棗と二人暮らしをする事もない。
「てか、姉さんが研究所で働いてる時点で僕がスラム外の人間だって分からない?」
「あ」
「それに僕機械好きだけど、スラムじゃいじれる限度があるでしょ。ここガラクタしかないのにあれだけパソコン引っ張ってきてたら察しつく……」
「わっ分からなかったんだから仕方ないじゃない!咲眞普通にスラムに慣れてる感じだったし…!」
「そう?来たばっかの頃は戸惑ってたよ」
「えぇ!」
そんな戸惑っていたなどと可愛いそぶりがあっただろうか。
茉梨亜達が咲眞と出会ったのはほぼ二年前。
あの頃から既に咲眞はこんな感じだった様な。
「にしても、外界者だからナンバー外れるっていうのはどういう事なんだろ……」
「そんな事より咲眞ってば、学校はいいの?」
「そんな事よりって……」
……分かってはいたが茉梨亜は頭脳派ではない。
黒川邸での態度の方が異常で、基盤は明朗活発・ポジティブシンキング・猪突猛進・純粋・単純である。
「だって咲眞ってあたし達と同い年でしょ?なら外界にはぎむきょーいくがある筈じゃない」
「あれ、茉梨亜歳いくつ?」
「十五」
「今年で?」
「う?うん」
「僕もうすぐ十六」
「……」
「……」
「年上ーー!!!」
「一つしか変わらないじゃない」
茉梨亜が必要以上に驚いているのを咲眞は冷静にたしなめた。